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ディズニーランドの魔法の秘密を、特許から探る

特許

高度に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない

SF作家アーサー・C・クラークはそう語った。
先日、10年ぶりのディズニーランド・シーで、私は“魔法”を見てきた。

キャストももちろん素晴らしいが、技術の面で10年前より大きく進歩していた。
プーさんのハニーハントでは私の乗ったハニーポットがレールのない道を前へ後ろへ回ったり跳ねたりもしながら進んでいった。Fantasimic では数十メートルの巨大な円筒形のステージや同じく巨大な鏡を模した水のスクリーンに鮮やかな映像が映し出され、悪の魔法使いとの壮絶な戦いが演出された。細部まで作り込まれた光と音の空間に放り込まれると、今流行のヘッドマウントディスプレイも遙かに超える没入感を得ることができた。

現在、ディズニーランドの入場料金は1日6200円。テーマパークとしてはかなりの高価格にもかかわらず、他の追随を許さない入場者数を記録し続け、人気アトラクションは平日でも1時間待ちが当たり前だ。
この人気の原動力の1つは、皆が驚く魔法を生み出すウォルトディズニーカンパニーの傑出した技術なのだろうと感じた。入場料金やちょっと高めの食事やグッズ代が、ディズニーに対して新たな魔法の開発を依頼するための料金と考えれば、ディズニーランドの入場料金は他パークよりむしろ良心的にも感じる。

そのディズニーの魔法はどのような技術で作られているのか。例えばこんな解説記事もあって、興味深い。

ディズニーランド技術の裏側 新しいショーがスゴイ!

ディズニーの技術開発に興味を持ったので、個人的にも調べてみた。
技術を調べるといえば特許。特許文書では企業が重要な技術を独占実施する代償として、原理から実施方法まで詳らかにしている。そこで、ディズニーが国際出願した特許を1つ紹介する。

紹介するのは、1本のろうそくをリアルに再現する技術。テーマパーク内で本物の炎を使うことには安全確保を始め多くの制約がある。そこでフェイクの炎を使うことになるが、人が見慣れた炎を再現するのは難しいらしい。しかし、ディズニーは以下のようなリアルな炎を再現する方法を見いだした。この動画は、Disneyの特許技術を使った商品。日本でも販売されている。


LuminaraPVおでかけ編 - YouTube

なかなかの炎っぽさ。いったいどんな技術で炎を再現したのだろうか。特許公報の引用とともに説明する。

【公報種別】公表特許公報(A)
【公表番号】特表2012-504310(P2012-504310A)
【発明の名称】運動学的な炎装置

特殊効果アーティストに対する1つの困難な課題は、1つのろうそくの炎のシミュレーションである。暖炉または舞台装置など大きな火における模倣された炎については、それらの炎は通常一定の距離から眺められるので、また、大きな火の効果の大部分には輝きとくすぶりが含まれ、これは容易にシミュレートできるので、設計することは比較的容易である。しかしながら、1つのろうそくは、多くの場合、短い距離にて眺められ、効果の焦点は、灯芯上で運動学的にまたはランダムに動く単一の炎の揺らめく光にある。

普通の炎を模すことは容易でも、ろうそく1本の微妙な揺らぎを表現することは難しいとのこと。

特許文献1には、半透明の外殻に付けられた複数の着色照明を用いる装置について記載されている。ここで、この照明は、可動部なしで光のアニメーションを行うことを試みるコンピュータプログラムに従って、エネルギーを与えられる。特許文献2には、ろうそくの炎をシミュレートする装置が開示されている。この装置は、ろうそくをシミュレートするように、炎に似せた可撓性部材を吹いて揺らす、すなわち、振動させるべく、気流を発生させて、炎に似せた可撓性部材に向けてその気流を案内するための吹付装置を備えている。特許文献3には、光透過性の光散乱ランプケーシングが取り付けられた電球が開示されている。これらのおよび他の試みによって得られる炎の表示は、実際の炎の比較的劣った模倣でしかなく、商業市場または小売市場に広く採用されてはいない。加えて、そのような装置は、通常、相当なエネルギー入力を必要とするとともに、頻繁なバッテリ交換を必要とする。

従来技術では、見た目が炎とはほど遠く、かつ消費電力も大きなものばかりとのこと。そこで、ディズニーは下記のような発明を行った。


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炎をシミュレートする装置は、第1のステージおよび第2のステージを備えた内部空間(または上側および下側の空間)を形成する、1つ以上の側壁(またはハウジング部分)を備えたハウジングを含んでよい。電気コイルなどの駆動機構が、第1のステージの中へ延びる時間変化する電磁場を発生させるために提供されてよい。この装置は、第1のステージの内部空間内に旋回可能に取り付けられている、第1のステージ振子部材も含んでよい。第1のステージ振子部材は、第1の端部上の第1の磁石(例えば、埋め込まれたまたは取り付けられた永久磁石)および第2の端部上の第2の磁石(例えば、埋め込まれたまたは取り付けられた永久磁石)を含んでよい。一部の場合、第1の磁石が時間変化する電磁場と相互作用して時間を通じて(または駆動機構用の動作期間を通じて/動作期間中に)第1のステージ振子部材を運動学的に変位させる(またはランダムなパターンにより変位させる)ように、第1の端部は駆動機構に隣接して配置されている。

かなり単純な構造。円筒の一番上についている一番上の炎を模した板を、電磁力+張力+重力の3つの力の相互作用でランダムに揺らすことで、リアルな炎を作り出している。
具体的には、図にあるようにろうそくを模した円筒の中に磁石をつけた板をつり下げて、その板を下に置いたコイルから出る磁力線で揺らす。これを2段重ねて、一番下から磁力をかけると、板は複雑な力を受けてランダムに振動し、板の上端の炎の形の板が揺れながら光を受けると、本物の炎のように見えるらしい。

中身を見ると単純で、拍子抜けする内容だった。なのに上記のようなリアルな炎が作れる。そして、ディズニーが開発するまでこの原理のLEDキャンドルは世に存在していなかった。技術に限らず、こういう発想の柔軟さを見習いたい。